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空き家からはじまる新しいまちづくり

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『さかづきBrewing』金山尚子さん

足立区初!
ビールの醸造所を備えるパブを切り盛り

近年では、住みたい街ランキングにも登場するようになった千住。
交通の便がよく、駅ビルもあり、グルメな人が集う飲食店も続々とオープンし、一方で昔ながらの商店街や路地、銭湯、古民家など、昭和っぽさも色濃く残っています。

 

そんな新旧が交差する千住のまちの中でも、
東京電機大学の誘致で大きく変わりつつある北千住駅の東口エリアを中心に、
そこで働く人、暮らす人を紹介していきます。

 

今回は足立区初のビールの醸造場を持つ
ブルーパブ『さかづきBrewing』の店主 金山尚子さんを紹介します。

 

 

北千住駅の東口を出て真っすぐのびる千住旭町商店街。
3分ほど歩き、路地に入ってすぐの住宅街に店を構えるブルーパブ『さかづきBrewing』。

ブルーパブとは、店内にビールの醸造所を設ける酒場のこと。
夜になると足元まである窓からやさしい光が漏れ、存在感を増します。グリーンのレトロなドアを開けると、ビールを飲みながら談笑する人たちの向こうに、客席の間を縫うように行き来する店主の金山尚子さんの姿がありました。

 

店主の金山尚子さん。
ビールの醸造家でもある。

 

―クラフトビールを気軽に飲める人気店-

客席の窓越しには、醸造タンクが見えます。金山さんはビール造りに励みながらテキパキと接客もこなし、オープンの2016年3月から3年が経ちました。今や人気店となり、満席で入れないことも。クラフトビール好きの人がわざわざ電車を乗り継いで来ることもあるそう。

「今でこそ日本人にクラフトビールは定着しましたが、敷居の高いお店にはしたくなかったんです。仕事帰りとか、休みの日のリラックスした時間に普段着でふらっと立ち寄れるお店にしたくて…。土日は家族連れの方も多いですし、明るいうちから5時間飲み続けるツワモノも(笑)。ビアパブは7~8割が男性客と言われていますが、うちの店は4割が女性。女性にも入りやすいと思っていただけるのは嬉しいですね」

 

―安定した道を捨て
1人でビールを造る自由な道へ―

金山さんは、かつて大手飲料メーカーの社員としてビールの醸造や商品開発に携わった経歴があります。安定した道を捨て、自分の求めるビールを造る道へ進みました。

 

「大学では農学や微生物を学び、チェーン系居酒屋のバイトでビールのおいしさに目覚めたことが飲料メーカーに入社したきっかけでした。最初はビール工場で品質管理などの仕事をしていましたが、朝からビールの試飲。味を覚えようと真面目にいろいろ飲み、夜は飲み会も多く、入社当時は朝からトイレにこもることもありましたね。でも、そんな生活を1か月ぐらい続けていたら、体が慣れたみたいで全く問題なくなりました(笑)。ビールを造ることは楽しかったですが、サラリーマン社会の中でずっと闘い続けることに限界を感じましたし、自分の造ったビールを飲んでくれるお客さんの顔を直接見たいという気持ちも強くなって、思い切って脱サラしました。今の方が体力的にキツイし、帳簿をつけたりとビール造り以外にやるべきことも多くて大変。でも、自分が頑張った分結果が出るので、組織に属していた時よりシンプルで心地よく、自由になった気がします」

 

―お店を出そうと決めたのは
故郷の雰囲気に似た千住-

 

東京のさまざまな街を歩いた結果、お店を出す地に選んだのは千住。お店を出してみて、金山さんの出身地でもある大阪に似ていると感じたそう。

 

「おしゃれで気取った場所ではなく、地元の人が普段づかいできるお店にしたかったので、商店街に活気があって住んでいる人の姿を感じられるような街を探しました。その結果、千住を選んだものの、良い物件になかなか出会えず、自分で歩いて空き店舗を探したことも。そんな時に、シェアハウスを店舗にしたいという大家さんに出会い、即決しました。資金もないので内装は自分たちでDIYをした部分も多いんです。大家さんはご高齢の女性なのですが、玄関のドアをくださったのでそのままお店に使い、なぜかウミガメのはく製もくださったのでお店に飾っています(笑)。建築の知識もなかったので、近所で解体工事をしていた業者さんにいきなり声をかけて、内装の相談をして業者さんを紹介していただいたりと、かなり行き当たりばったりでした。お店の工事中には、見知らぬおばちゃんが勝手にズカズカ入ってきて「ここ、何ができるの?」と聞かれることも一度や二度ではなくて(笑)。あけっぴろげで、おせっかいなところがあって、そして温かで、故郷の大阪に似ているなあと思いました」

 

大家さんにもらったレトロなドア。
温かみのある風合いがお店の雰囲気にピッタリ。

 

 

―ビールを通して広がる人の輪や夢―

「お店は自由な雰囲気になるよう、醸造所も厨房も丸見えに。シェフはちょっと嫌がっているかもしれません(笑)。ビールは定番の『風月ペールエール』の他、9種類ぐらい用意しています。常にアンテナを張っていて、コンビニの商品棚を見ている時などにも新しいビールのアイディアが浮かびます。

ビール造りは簡単に言うと、お湯で煮た麦に酵母を加えて発酵させます。温度管理や寝かせる時間など調整が難しく、天候によってもできあがりが変わりますし、発酵してできあがるまで正確に味がわからないのが、怖くもあり、楽しみでもあります。経費節減のため、醸造タンクは寸胴鍋をリメイクした小規模なものを使っていますが、それでも1個170ℓなので思いどおりにいかなかった時はガッカリ。設備がもっと整えられれば、今の設備ではできない技術を使ったビール造りや、ビールのテイクアウトやビールを使った料理も実現させたいです。

最近は地域のイベントに出店することもあって、常連さんが遊びに来てくれたり、イベントで知ったと来店してくださる方も。ビールを通してお客さん同士でも輪ができたり、飲んでくださる方の顔を直接見られることが幸せです。ビールに詳しくなくても、苦みが少ないものが飲みたいなど、気軽にリクエストしてみてくださいね。喉越しがよいビールなら、背の高いグラスにつぐと、飲む時に喉が自然と大きく開くので、ゴクゴク気持ちよく飲めるんですよ」

 

そう、気さくに色々と教えてくれる金山さんからは、サバサバとした面倒見のよさが伝わってきます。姐御肌な金山さんを頼って、素顔のまま、気取らずにビールの世界に飛び込めそうです。

 

タンクからホースを繋ぎ、ビールをつぐ。

「その日のビールは黒板に書いています。
アルコール度数の他、苦みの目安も数値化しているので参考に」(金山さん)

定番の『風月ペールエール』の苦みは35で、どっしりした風味。

 

 

『ほろ酔いセット』(税抜1111円)は1人客のみがオーダーできる。好きなビール(税込700円未満のもの)+おつまみプレートのセット。おつまみプレートは、メインをスペアリブかソーセージ4種の中から1種選び、ポテトサラダとザワークラウトもつくボリューミーなセット。

 

ビールとの相性抜群の料理の数々は、川上輝さんが担当。写真は、ガーリックバターソースが効いた『牛ペッパーステーキ&フレンチフライ』(税抜1296円)。

 

『さかづきBrewing』

足立区千住旭町11-10

☎03-5284-9432
【営業時間】
(平日)16:00~22:30
(土曜)13:00~22:30
(日曜)13:00~21:30

【定休日】
月曜・火曜

 

 

取材  :西谷友里加
イラスト:渡邉由貴恵

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