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空き家からはじまる新しいまちづくり

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『ピッツェリア エ トラットリア アダッキオ』          店長・村瀬雄介さん 副料理長・矢内芳昌さん

古民家をリノベーションした本格ピザのレストラン

近年では、住みたい街ランキングにも登場するようになった千住。交通の便がよく、駅ビルもあり、グルメな人が集う飲食店も続々とオープンし、
一方で昔ながらの商店街や路地、銭湯、古民家など、昭和っぽさも色濃く残っています。
そんな新旧が交差する千住のまちの中でも、東京電機大学の誘致で大きく変わりつつある北千住駅の東口エリアを中心に、そこで働く人、暮らす人を紹介していきます。

 

今回は、古民家をリノベーションしたおしゃれな店構えとピザが人気の『ピッツェリア エ トラットリア アダッキオ』の店長 村瀬雄介さんと、副料理長 矢内芳昌さんを紹介します。

北千住駅東口から歩いて11分ほど、京成線『京成関屋駅』と東武伊勢崎線『牛田駅』からは墨堤通りをまっすぐ9分ほど歩いた場所に、休日になると行列ができる店があります。ここは2014年11月にオープンした一軒家レストラン。白壁に手書き風の店名が描かれ、温かみのある雰囲気が目を惹きます。店内にはピザ窯があり、常時20種類ほどのピザと、肉料理などが楽しめます。料理長を務める岡田智至さんは、『日本ナポリピッツァ職人世界選手権』のピッツァクラシカ部門で優勝した経歴の持ち主。古民家をリノベーションした店内でいただく本場ナポリの味を求めて、毎日お客さんが絶えません。

常時20種類ほどあるピザの中で、いちばん人気のピザ『マルゲリータ』(1400円・税抜)。国産小麦をブレンドし、天然酵母を合わせたピザ生地を発酵させ、薪窯で焼き上げる。

写真奥は、肉質からこだわった『オーストラリア産プライムアンガス牛肩ロース肉の炭火焼き』(2100円・税抜)。ピザと肉料理を一緒に楽しむ常連客も多い。

建物の築年数は不明。蕎麦店として使われていた建物をリノベーションして現在の姿に。

墨堤通り沿いの、京成関屋駅と牛田駅に向かう途中に店舗を構える。

ジョギング中に偶然出会った古民家にひと目惚れ

 

レストランの隣には、自家焙煎のコーヒーが評判のカフェ『スロージェットコーヒー』があります。こちらはスタイリッシュな雰囲気。実は2つのお店、もともとは同じ持ち主の建物だったそう。『アダッキオ』の1階は蕎麦屋で2階は店主の住まい、『スロージェットコーヒー』はガレージとして使われていました。

『アダッキオ』の隣には、自家焙煎したコーヒーを楽しめる『スロージェットコーヒー』を同時オープン。両店とも今や北千住の人気店。

この2つの店舗を運営するのは、飲食店を多数展開する会社、バルニバービ。代表取締役である佐藤裕久さんは、都内のさまざまな街をジョギング中、偶然この物件に出会ったそう。空き店舗になっていた蕎麦屋の隣には蔦の絡まるガレージと小さな庭があり、ヨーロッパの小さな街にあるカフェとイメージが重なったのです。そこからスタッフが力を合わせ、店づくりが始まりました。

 

現在店長を務める村瀬雄介さんは、当時は立地を心配する声もあったと言います。「駅からも商店街からも離れた住宅街です。車の往来が多い墨堤通り沿いではありますが、たまたま車で通りかかった人の目に止まるような派手さもありません。でも、この距離感だからこその魅力があると、今は自信を持って言えます。駅周辺は人が多く、お店の広さも確保しづらいので、お客様にゆったり過ごしていただくにはこの場所が正解でした」。

 

店長を務める村瀬雄介さん。

『アダッキオ』店内は2階建ての一戸建て。客席同士が適度に離れているため、それぞれの時間をゆったり過ごせる良さがあります。店内には蕎麦屋時代の柱や梁が残り、古民家らしい趣が色濃く残っています。

2階建ての一戸建てをリノベーションした店内。1階は厨房と客席がある。

 

2階の客席はより古民家らしい雰囲気。天井は立派な梁がむき出しになっていて、開放感いっぱい。

リノベーション前の写真を見ると、以前は純和風の店構えだったことがわかります。天井を壊し、住居のため何部屋にも分かれていた2階は壁をとっぱらい、ひとつの大きな空間にしています。

「解体や塗装など、多くの作業をスタッフが行い、プロの業者には仕上げを中心にお願いしたそうです。会社の中に店舗デザインを担当する部署があり、絵の前にアンティークの机を置きたいとか、家具も含めて全体をコーディネートし、形になっていきました」(村瀬店長)。

 

蕎麦屋だった建物をリノベーションし始めた頃。

重厚感のある柱と梁はそのまま。年月を経たからこその小さな傷も味わいになっている。

『アダッキオ』の隣の『スロージェットコーヒー』は、蕎麦屋のガレージだった。蔦が絡まる外観は、現在の姿に重なる。

 

―自分たちの手を使うことで、生まれる愛着―

 無事に店舗ができた後も、メンテナンスは度々必要になります。

「壁は1、2年経つと汚れが目立つので、年末になるとスタッフで壁を塗り直しているんです。自分たちで作業もすることで愛着が湧きますよね」(村瀬店長)。

現在は前菜やメイン料理を主に担当している副料理長の矢内芳昌さんも、大きくうなずきます。

「古民家を活かした建物で働くのは、このお店が初めてでした。メンテナンスの手間はあっても、その分、大切に思う気持ちはどんどん増しています。お客様もこの空間を気に入ってくださっていますが、僕も働いていてリラックスできるんです」(矢内副料理長)。

副料理長の矢内芳昌さん。神保町のフレンチレストランに勤めていた時、岡田料理長に出会った。

 

店には、近郊から電車を乗り継いで駅から歩いて来る人も少なくありません。村瀬店長は『アダッキオ』での勤務が決まってから初めて、北千住の駅に降りたそう。

「この店に配属が決まった時、地図を片手に歩きましたが、たどり着けなかったです(苦笑)。オープン当時は今よりも近隣にお店も少なくて、夜は真っ暗でしたが、北千住はどんどん賑わっています。店からも近い隅田川の土手ではジョギングしている人も多くて、今では住む場所としてもこの街を気に入っています」(村瀬店長)。

駅から離れていても多くの人に認知されたのは、イベントの力も大きかったと振り返ります。

「ワークショップの後に参加者でランチをするという、地元のママさん主宰のイベントを開催するようになり、そこに参加したお客さんが次の機会にご家族やお友達を連れて来てくださり、輪が広がっていきました。料理にも自信がありますが、ゆったりできる隠れ家的な魅力も感じていただけているのだと思います」(村瀬店長)。

 

―技を磨き、舌を肥やし、完成された味―

 取材時は、岡田料理長は『ナポリピッツァ職人世界選手権(カプート杯)』に参加するためにイタリアへ出張中(2019年世界3位獲得!)。矢内副料理長がピザ窯のある厨房を案内してくれました。お店の象徴ともいえるこのピザ窯も、スタッフの愛情がたっぷり。窯には店名が描かれているが、よく見るとモザイクタイルが施されています。これもスタッフの手によるものだそう。ピザ窯に薪をくべると、窯の中は450度ほどになると言います。

オープン当時は無地だったピザ窯が、モザイクタイルがかわいらしい窯に。ピザ窯の目の前のカウンター席は特等席!

「遠赤外線効果か、冬は外に出ても体がポカポカ温かいんですよ(笑)。ピザは窯に入れて90秒ほどで焼き上がりますが、複数のピザを同時によい塩梅で焼くことが腕の見せどころ。この窯では6枚のピザを同時に焼けますが、技術がないうちは3~4枚が精いっぱい。窯の中でも場所によって温度も変わり、ピザの枚数でも庫内の温度は変わります。適宜見極めて、ピザを置く場所を入れ替えていくのは難しいですね。ピザはもちろん、メイン料理も素材からこだわっています。肉の炭火焼は、外側はカリっと香ばしく、中はしっとりジューシー。野菜も農家さんに直接交渉しに行って仕入れていますし、素材の良さを味わっていただきたいです」(矢内副料理長)。

北千住の街をゆるりと散策し、この一軒家レストランで大切な人と料理を味わう。慌ただしい日常の中で忘れていたものを、取り戻せそうな気がします。

 

 

<ショップデータ>

ピッツェリア エ トラットリア アダッキオ

千住東1-29-12 ☎03・3888・8276

【営業時間】

<ランチ>11:30~14:30(L.O.)

<ディナー>18:00~22:00(L.O.)※土曜・日曜のディナータイムは17:00~

【定休日】無休

 

イラスト:秋山弥生

取材・原稿:西谷友里加

 

 

 

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