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空き家からはじまる新しいまちづくり

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『廣正』・『広正鮮魚店』 横川恵子さん

地元に根差した魚屋が営む

豪快な刺し盛りが名物の居酒屋

近年では、住みたい街ランキングにも登場するようになった千住。交通の便がよく、駅ビルもあり、グルメな人が集う飲食店も続々とオープンし、
一方で昔ながらの商店街や路地、銭湯、古民家など、昭和っぽさも色濃く残っています。
そんな新旧が交差する千住のまちの中でも、東京電機大学の誘致で大きく変わりつつある北千住駅の東口エリアを中心に、そこで働く人、暮らす人を紹介していきます。

 

今回は、1980年頃から地元の人に愛される居酒屋を営む『廣正』の横川恵子さんを紹介します。

木の電柱に取り付けられた、傘の付いた裸電球。今では滅多に見かけないものですが、これが現存する商店街が『柳原商栄会』。北千住駅東口からまっすぐ商店街を抜け、さらに路地に入んだ場所にあります。ノスタルジックな風情に浸りながら歩みを進めると、民家が密集する中で一軒の酒場に辿り着きます。こちらが『廣正』。

一戸建ての1階が店舗。お店を囲うように植木が並んでいる。

むしろ懐にやさしい“時価”メニュー

 

新鮮でおいしい魚が食べられる『廣正』では、刺し盛りが創業当時からいちばんの人気。魚屋をやっているからこそできることだと、横川恵子さん。メニューは魚づくし。すべて“時価”と書かれていて思わず身構えてしまいますが、ここは下町。驚きのボリュームをリーズナブルに楽しめます。うにがギッシリ詰まった『うにの大箱』も、ぜひ頼みたいメニュー。他の街から来てふらりと入る人は少ないですが、この街をよく知る地元のお客さんで賑わっています。

写真で2人前の刺し盛り。4人ぐらいで食べても充分なボリューム。

魚屋だからこそできる、盛りのよさ

 

恵子さんの両親が1962年創業の魚屋『広正鮮魚店』を始め、この居酒屋は1980年頃に開き、現在は恵子さんの弟である広部孝行さんが料理長を務めています。

「弟は毎日のように千住にある足立市場や、豊洲市場に通って仕入れをしています。他のお店と違うことをしたいという弟の思いから、今の盛りのいいスタイルになりました」(恵子さん、以下「」内同じ)。

 

左) インタビューに答えてくれた横川恵子さん

中央) 魚屋、居酒屋『廣正』の仕入れを担当し、料理も担う、恵子さんの弟の広部孝行さん。

右) 恵子さんの母である広部孝子さん。まだまだ夫婦で現役!

魚屋は居酒屋から徒歩2~3分の場所にあります。商店街を抜け、大踏切通りを超えた路地を入ったところにあり、夕方には地元の人がかわるがわる買い物に訪れます。商店街が数多くある北千住ですら、魚屋はかなり減って数少なくなっている昨今。『広正鮮魚店』はかなり貴重な存在です。

『広正鮮魚店』は鮮魚、干物、刺身だけでなく、魚を使ったお惣菜も充実。

地域コミュニティでもある街の小売店

 

魚屋も居酒屋も、基本的に家族で切り盛りしているそう。高齢になった恵子さんのご両親もお店を支えています。恵子さんは魚屋の閉店作業まできっちりこなすので、居酒屋を手伝うのは魚屋がお休みの日曜や祝日が中心です。両方を行き来する生活は忙しくもあり、人との交流が楽しいし、喜びだと笑います。

「北千住は生まれ育った場所なので、このまちが好きです。でも、昔の方がもっと好きかな。商店街ももっと賑やかで、お年寄りがいつも井戸端会議をしていて、友達が遊びに来ると“今日はお祭りなの?”って聞かれたことも(笑)。今はこのまちに住む若い人がだいぶ増えて、魚屋に買いに来る新しいお客さんも増えてはいるんです。でも、スーパーなど大型店で買い物を済ませてしまう人も多いし、若い人の間では魚離れが進んでいるので、ちょっと寂しいですよね。魚は鮮度を保つため設備に手間もお金もかかりますし、なかなか大変なご時世です。でも、足が不自由なお年寄りはあまり遠くまで買い物に行かれませんよね。ちょっとお喋りがてら買い物してくださるのは嬉しいし、頑張らなければと思いますね」。

次々に来店するお客さんが手にするのがお惣菜。焼き魚あり、揚げ物あり、そしていかと大根を煮た『いか大根』や、『あさりバター』なども並んでいます。

「お惣菜の種類も意外と多いので、やることがけっこう多くて大変なんです(笑)。居酒屋の料理も魚屋のお惣菜も、味には自信がありますよ」。

作るのに手間がかかる魚のお惣菜は、主婦の強い味方!

この日は翌日の雨の天気予報を心配して、ちょっと多めに買い物をしていくお客さんが多め。“明日の雨、けっこう酷そうね? 明日に備えて買いに来たわ” そんな他愛もないお喋りをしながら、今夜食べるもの、明日食べるものを選ぶ。居酒屋では、仲間たちと酒を酌み交わしながら、盛大に盛られた刺身をつまむ。何気ないけれど幸せな日常をそっと支えてくれるこの場所に、ゆっくりと歩を進める人が絶えません。

 

 

<ショップデータ>

廣正(ひろまさ)

柳原2-25-1 ☎03・3881・5133

【営業時間】17:00~23:00 【定休日】水曜

広正鮮魚店

柳原1-8−2 ☎03・3870・5696

【営業時間】10:00~19:00 【定休日】水曜・日曜

※この記事は、『町雑誌千住』Last号の取材記事をもとに構成しています。

イラスト:秋山弥生

取材・原稿:西谷友里加

 

 

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