SENJU PUBLIC NETWORK EAST

空き家からはじまる新しいまちづくり

PEOPLE

東京未来大学 モチベーション行動科学部 まちづくり+公共キャリア研究室 教授・キャリアカウンセラー 森下一成さん

学生×区内企業のコラボ

まちづくりに参入する教育の場

近年では、住みたい街ランキングにも登場するようになった千住。交通の便がよく、駅ビルもあり、グルメな人が集う飲食店も続々とオープンし、
一方で昔ながらの商店街や路地、銭湯、古民家など、昭和っぽさも色濃く残っています。
そんな新旧が交差する千住のまちの中でも、東京電機大学の誘致で大きく変わりつつある北千住駅の東口エリアを中心に、そこで働く人、暮らす人を紹介していきます。

 

今回は東京未来大学教授を務め、学生を巻き込んでのまちづくりに携わる森下一成さんを紹介します。

―足立区の老舗メーカーと学生でお菓子づくり―

近年、大学の誘致に積極的な足立区。北千住には東京藝術大学、東京電機大学、帝京科学大学、そして今回紹介する東京未来大学があり、今や都内有数の学生街でもあります。

東京未来大学は、2007年に4年制大学として設立した大学。北千住駅東口から歩いて15分、京成線の京成関屋駅から徒歩8分、東武スカイツリーラインの堀切駅から徒歩2分の場所にキャンパスがあります。

政治学や建築学を学びながらコミュニティを研究してきた森下一成さんは、2017年にモチベーション行動科学部の准教授として着任(2020年現在、教授)。まちづくり+公共キャリア研究室としてゼミを主宰し、地域と社会のあり方、まちづくりを研究しながら、地域住民や企業と学生の間を繋ぐパイプ役も担っています。近年では区内の菓子メーカーと学生がコラボして生まれたお菓子が注目を集めています。

「足立区はものづくりが昔から盛んで、菓子メーカーも数多くあります。区内の菓子メーカーと東京未来大学の学生がコラボし、新しいお菓子の開発をするプロジェクトが足立成和信用金庫や足立区役所との協働のもと、2014年から続いています」(森下さん・以下、「」内同じ)

2017年度に学生が開発に携わり、2018年に販売を始めたお菓子が『みらいおこし』。区内の老舗菓子メーカーである篠原製菓と一緒に、昔ながらの雷おこしを今の時代に合うものに開発しました。

『みらいおこし』はひと口サイズのおこしに、さまざまな味を絡めた食べやすい新感覚の雷おこし。味は、うなぎのタレ・黒こしょう・甘酒の3種類。のちに、区内の日本茶専門店『茶匠おくむら園』ともコラボし、お茶とお菓子のセットも販売。

 

―プレ社会人経験で、成長する学生たち―

 森下さんが着任する前から行われていたこのプロジェクト。以前はゼミ活動のひとつとして行われていたものの、森下さんの着任後から全学生からの公募制で行われているそう。このプロジェクトが始動するのは毎年5月頃。足立区・足立成和信用金庫・菓子メーカー・学生の4者が集まっての会議がスタートします。大人の中でも声を上げやすいよう、最初のうちは会議で森下さんが司会を務め、慣れてきた頃を見測って自身はマネージメントに専念するよう心がけてきたそう。

「企業は各担当者が予算を考えたり、試作したりして、それを持ち寄って会議を重ねます。商品ができたら、今度は宣伝。企業の商品開発プロセスと同じ流れで進めます。学生はアイディアは豊富ですが、コスト意識が弱いところがあります。大学で経営を学んでも、どうしても机上の学問になりがち。こうして社会人に交わることで、机上の学びが生きた学びになります」

『篠原製菓』と学生がコラボした『みらいおこし』は、イベントでも販売。区内の舎人公園で毎年4月に行われる『千本桜まつり』の屋台で販売し、学生の成長を感じたと感慨深く振り返ります。

「シャイな学生が、イベントの時に大きな声で呼び込みをしていました。上級生ということでやむなくリーダーになった学生は、最初は他の学生たちに押されがちだったものの、次第にリーダーの顔になっていきました。また、プロジェクトを牽引した学生は、このイベントの日には社会人になっていましたが、手伝いに来てくれました。こうしたPBL(プロジェクト・ベースド・ラーニング)の意義深さを感じましたし、チャンスがあれば、誰でも成長できるんだなと感じる出来事をたくさん見せてもらいました」

舎人公園で桜の時期に行われる『千本桜まつり』の会場にて。学生が企業と共に屋台を出し、製菓メーカーとコラボして開発したお菓子を売る。お客さんからの評判も上々!

 

―学生の力でまちを盛り立てる―

 森下さんが千住の街と縁ができたのは、東京未来大学への勤務が決まってから。自身は同じく東京の江東区の出身です。

「今も菩提寺があり、先祖代々が眠る地元の下町は、最近、おしゃれなまちになってきていますね。それに比べると、千住はまだ昔ながらの下町感が残っています。1階が店舗で2階が店主の住居という昔ながらの商店もまだ多く、賑やかさを保っている商店街も多くて、魅力的なまちだと感じています」

 

森下さんは他にも地域活性化に貢献。西新井の商店街『関三通り商店街』で毎年行われてきた『関三まつり』に、2017年から学生も屋台を出して参加しています。毎年、足立区内の印刷・出版業者が中心となって開催される『千住紙ものフェス』では、関三通り商店街の『茶匠 おくむら園』とコラボしたオリジナルティーバッグとコースターも販売。こうして学生が入ることで子どもの参加も増え、確実に集客は増えているそう。

 

こうしたイベントを通して、まちに興味を持つ学生も増えています。学生の中には、活気ある商店街を知らずに育った人も少なくないと語ります。

「特に地方から上京してきた学生は、空き店舗ばかりの寂れた“シャッター商店街”が商店街のイメージらしく、“生きている商店街を初めて見た”という学生もいるんです。

たとえ商店街が活気あるまちに住んでいたとしても、成長するにつれ関係性は薄れていきます。”地域活動の谷” 世代と呼んでいるのですが、10代前半から勉強や部活が忙しくなり、進学、そして学校卒業、就職と進むにつれ、まち・地域とのかかわりがなくなってしまう。この世代が“地域活動の谷”世代ですね。大型店舗が増え、ネットを通して世界中と繋がれる昨今は尚更、地域との繋がりが希薄に。未来を担う若い人たちがこれでは、寂れた地域はますます寂れてしまいます。

この状況を変えるためには、大学生がまち・地域に入ることは意味のあること。少し年上の大学生が地元で遊んだり、イベントの手伝いをしていたりすると、中高生もけん引されてきます」

 

―まちと学生を繋ぐのがまちづくりに携わる大学人の役割―

 

東京未来大学教授の森下一成さん。学生が地元企業とコラボした商品を手に。

学生が地域に入るきっかけを作るのは、まちづくりに携わる大学人の役割だと森下さん。森下さん自身、千住に馴染もうと、いろいろな店を積極的に訪れました。

「教員は、地域と学生を繋ぐコーディネーターの役割を果たすこともあります。たとえば、まず私たちがお客さんとしてお店に出向いて、関係をつくります。そのうち会話が弾めば、高齢化が進んでいるなど、いろいろな悩みを打ち明けてくれます。そこから、学生をそのまちに入れた時にどう活かせるか、またどのような学生の学びにつながるかを考え、学生が自分たちで徐々にハンドリングできるようサポートします。この経験が、“自分たちの力で社会を変えられる”と希望を持つきっかけになるのでは。そういう意識がたとえば投票率の低下も防ぐことにもつながるかもしれませんね。自分の思いを具体化するという、まちや地域をマネジメントした経験は、就職した時も力になると信じています」

東京未来大学は足立区にキャンパスを構えますが、葛飾区堀切にも近く、隅田川を越えれば荒川区南千住。墨田区にも隣接しています。この4つの区を繋いで全体を活性化させる“未来大・四ツ葉のクローバー計画”を模索中の森下さん。もちろん、毎年恒例の企業とのコラボも現在進行中。今年度は、足立区、NPOとの協議で発進させた学生と企業とをつなぐ企画が功を奏し、区内企業と学生がカードゲーム『ほめじょーず』を開発・販売に至りました。地域と若者の橋渡し役として、今日もどこかの店で穏やかに、でも熱く、想いを語っていることでしょう。

<大学データ>

東京未来大学

足立区千住曙町34-12

 

イラスト:秋山弥生

取材・原稿:西谷友里加

 

 

PEOPLE TOP