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空き家からはじまる新しいまちづくり

PEOPLE

『nomiya ノミヤ洋菓子店/五席酒場ノミヤ』 

店主・川崎雅代さん

 

飲み屋の多い千住でも稀有 ケーキとお酒のペアリング

 

近年では、住みたい街ランキングにも登場するようになった千住。交通の便がよく、駅ビルもあり、グルメな人が集う飲食店も続々とオープンし、
一方で昔ながらの商店街や路地、銭湯、古民家など、昭和っぽさも色濃く残っています。
そんな新旧が交差する千住のまちの中でも、東京電機大学の誘致で大きく変わりつつある北千住駅の東口エリアを中心に、そこで働く人、暮らす人を紹介していきます。

 

今回はスイーツとお酒を楽しめるお店
『nomiya ノミヤ洋菓子店/五席酒場ノミヤ』の店主 川崎雅代さんを紹介します。

 

 

北千住駅東口の正面にのびる千住旭町商店街。突き当りにほど近い路地に入ると、素敵なのれんと提灯が掲げられた店があります。ここは、平日は夕方に開店し、夜にはバーになる『nomiya ノミヤ洋菓子店/五席酒場ノミヤ』。2018年にオープンしたばかりで、ファンをじわじわと増やしています。

 

賑やかな商店街から路地に一歩入ると、一軒家が建ち並ぶ静かな住宅街に。 ここに店を構える。

 

 

 

―甘いだけじゃない、大人のスイーツ-

 

 グレーにペイントされた壁は一見無機質な印象。ですが、木のカウンターや壁に掛けられたドライフラワーのスワッグなどが温かい雰囲気を醸し出し、おしゃれな空間です。こじんまりとした店内に入るとすぐ、ケーキを並べたショーケースがあります。奥行ある店内は、五席だけのカウンターがあり、お酒のボトルがずらり。店の奥から顔を出したのは、店主の川崎雅代さん。華やかな顔立ちながら、ラフにお団子を結った髪はえりあしが刈り上げられ、“甘いだけじゃない”雰囲気をまとっています。川崎さんは1人でお菓子を作り、バータイムはケーキをお皿に盛り、おつまみやお酒を用意。おっとりした口調で常連さんと会話しながらも、初めてのお客さんがいれば、輪の中に入れるよう目を配ってくれます。

 

ところどころに花が飾られ、グレーの壁が印象的な店内。この壁は、インスタに載せるお菓子の写真の背景としても活躍している。

 

 お店のショーケースの中には、ケーキやシュークリーム、ババロアなど常時7種類ほどの洋菓子が並びます。ケーキの種類は少ないながらも、ひとつひとつ丁寧に作られている様子が伝わってきます。定番人気は、やはりショートケーキだそう。

「ショートケーキに使うフルーツは、基本的にいちごですが、時期によって変えています」と、微笑む川崎さん。取材時はメロンでしたが、今後は桃、ぶどうと切り替わっていきます。フルーツを仕入れるのは、お店の近所で学園通り商店街にある『杉本青果店』が多い。

「ほどよく熟したフルーツがすぐ手に入るので、かなりお世話になってます。ここにお店を出す前は北千住に詳しくなくて、たまたま声をかけてもらった縁でこの場所を借りました。今になってすごくラッキーだったなと思います。この街でお店を開きたいという人も多いようなので、こんなに駅から近くて何でも揃う場所にお店を開けたのはありがたいですね」

 

 

ふわっと軽い『メロンのショートケーキ』(550円)と、 濃厚な香りの『カヌレ』(220円)。 いずれも甘さ控えめで、お酒とも好相性。

 

―スイーツには興味のない人生を変えた、あるケーキ―

 

 川崎さんがここでお店を開くまでは、紆余曲折がありました。社会人になって5年ほどはOLをしていたそう。そこからナゼ、お菓子の道へ?

「OL時代、会社のお客さんからいただいた白山の洋菓子店『ル・ボンヴィヴァン』のケーキがおいしくて…。もともとお店の味より手づくりの味が好きで、小さい頃からケーキをよく作っていました。でも、このお店のケーキは私の好みの味をはるかに超えていて感激しました。手づくりの優しい味ですが、真似できないプロの味。私もこんな味のケーキを作りたい! 誕生日ケーキなど、ささやかでも思い出に残るケーキを作りたい! って。その後会社を辞め、念願叶って憧れのお店で修業することになりました」。

 

 食の世界は体力もかなり使うイメージ。当時はムキムキだったと笑います。

「30kgもある粉袋を持って店の階段を上り下りする毎日でした。最初は持てなかったですが、気付いたら二の腕が筋肉でムキムキに。朝は4、5時に起きて、夜は8時に閉店してからも片付けしたり、体力的にはかなりきつかったですね。お店の味を覚えようと試食もたくさんしたので、体力は使っているのにかなり太りました。人生でいちばん太っていましたね。あの時の頑張りがあるから今の自分がいるんですけど、あの時の体型には戻りたくない(笑)」。

 

―雇われるつもりがひょんなことから独立―

 

白山のケーキ店で修業し、その後都内のカフェで働き、次の職場を探そうとしていたら、お店をやらないかと誘われた川崎さん。

「カフェで働いていた時にお世話になっていた、北千住にある『decora』というお花屋さんのご両親が、今お店があるこの場所で居酒屋をやっていたんです。店を閉めるから、代わりに店をやらないかと誘ってくれて…。せっかくのチャンスだし、思い切って独立することにしたんです」。

 

さらにラッキーなことが起こる。『decora』オーナーのご主人が、北千住で大人気のカフェ『わかば堂』など、古民家リノベーションを手がける建築事務所『イトウケンチク』の代表。お店づくりをお願いすることに。

「都内に素敵なお店をたくさん造っている方なので、信頼しきってお任せしました。私が何となくのイメージを伝えただけで、ぴったりな雰囲気になっていました」。

 

店主の川崎雅代さん。住宅街の中で、ひときわ目を引くおしゃれな店構え。

 

 

―ケーキ屋専門店のはずが前の店主の想いを汲んで飲み屋に―

 

お店は平日は15時からのオープンと遅め。17時までは洋菓子のテイクアウト専門で、その後はバーの営業も始まります。ポテトサラダや水餃子などのおつまみもあり、ケーキとお酒のペアリングも楽しめる、ぜいたくな大人の空間。バーにしたのも、流れに身を任せた結果だと言います。

「もともとこちらは『千住野味屋』という居酒屋で、“常連さんが飲める場所がなくなっちゃうから、その人たちにお酒を出してほしい”って。お店の名前をそのまま使わせてもらいたいとお願いをして、了承いただきました。

 

『千住野味屋』の名が入った芋焼酎。お酒はワインや日本酒、ウイスキーなど幅広いラインアップ。

 

バーの常連さんは、近隣で働いていたり、住んでいる人がほとんどだそう。

「なぜか男性が多く、五席全て男性のお客さんなんてことも珍しくありません。気持ちよく酔っぱらって、帰りに奥様へお土産でケーキを買っていかれたり、ここでまず飲んでケーキはスナックのママへ手土産にする、なんていう方も。ケーキのテイクアウトに来られる方は、インスタを見てくださった方が最近増えています。今後は女性やスイーツ好きな方も入りやすいよう、お菓子とお酒のペアリングをもっと打ち出していきたいです。OL時代に私の人生を変えた、飽きの来ないやさしい味を目指して、経験を積んでいきたいです」

 

今日も夜が更けると、お客さんが1人、また1人…。あっという間に5席が埋まります。6人目のお客さんは、席が空くまでビールケースの特別席で乾杯。「今日は1杯飲みに来ただけだから」と、早々にカウンター席を譲るお客さん。肩を寄せ合い、譲り合う居心地の良さ。場の空気にほんわかと身を任せながらも、こだわるところはこだわる川崎さんの人柄が、人を呼び込み、新しい味を生み出す源になっているのかもしれません。

 

川崎さんが「めちゃくちゃ美味しいんです!」と絶賛するペアリングは、フランスの伝統菓子『カヌレ』(220円)と『ラム酒』(700円)の組み合わせ。カラメルを焦がしたような、ダークラムの濃厚な香りに包まれる。

※価格は2019年8月現在の税込価格です。

 

<ショップデータ>

『nomiya ノミヤ洋菓子店/五席酒場ノミヤ』
インスタグラム:https://www.instagram.com/nomiyakitasenju/
足立区千住旭町24-1 1階
03-5284-7603

営業時間:(月曜・火曜・金曜)15:00~22:00 ※イートインは17:00〜
(土曜・日曜)15:00~22:00 ※イートインは15:00〜
チャージは300円。

【定休日:水曜・木曜】

取材・原稿:西谷友里加
イラスト:渡邉由貴恵

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